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現パロ(比古+昌)⑤
++現パロ++
悪戯盛りのチビっ子です。
お説教真鉄もちょっと書きたかったり。
+ + + + + + + + + + +
何を切欠にそういう話になったのか。
天気の良い日が続いたある日のこと、縁側で遊んでいた2人の話題は、
“如何に雨を降らせるか”になった。
「まさひろ、しってる!」
昌浩が、元気良く右手を上げた。
「てるてるぼーず、したにするの!」
得意気な昌浩に、比古は頷いた。
「おれも、それ聞いたことある。でも、この前はきかなかったよ、それ」
「ええ~」
不満気に口を尖らせる昌浩に、比古は両手を打った。
「そうだ!じゅもんだよ」
「じゅもんー?」
比古は、自分の玩具箱をひっくり返した。
中には、玩具に混じってノートやら鉛筆やらも入っている。
「おれね、じゅもんおぼえてるんだ」
比古は珂神を継ぐものだ。
本人はまだその意味を良くわかっていないが、次代の教育は既に始まっている。
3つになった頃から、少しずつ不可思議な術の使い方を、真鉄に習っているのもその一環だ。
「なんだっけー、たしか・・・雨がふるじゅもんが・・・」
正確には覚えていないが、天気が悪くなる感じの術があった気がする。
青いノートは教えてもらった呪文をメモするものだ。
大人には解読不能な平仮名が並ぶ頁を、比古はパラパラ捲っていく。
「あ、これ!」
比古はある一文を指差した。
他の呪文に比べて短い一文の横には、黒雲と稲妻の絵が書いてある。
雰囲気的に、雨っぽい。
「たぶんこれ。指をこうして、このじゅもんを読むんだ」
印を結ぶ比古に、昌浩は目を輝かせた。
「ほんとにー?あめ、ふる?」
「うん。たぶん」
「みたーい!」
比古は、少し迷った顔をした。
真鉄から習った呪文は、決して人前で使ってはいけないと言われている。
「ね、ひこ。ちょっとだけ」
尚も懇願されて、比古の心は揺れた。
正直、試してみたい気持ちも、少なからずある。
それに昌浩だって不思議な力を持っているのだ。
昌浩の前でなら、呪文だって使っていいに違いない。
それに、雨を降らすぐらいなら、悪いことではないはずだ。
結局のところ、好奇心が勝った。
「ちょっとだけ・・・やってみる?」
比古の言葉に、昌浩が両手を挙げて喜んだ。
「えっと、こうやって指をくんで・・・」
昌浩が比古を真似て印を結ぶ。
上手く指を組めないのを手伝ってやり、一緒にノートを覗き込む。
「ひらがな、読める?」
「うん。まさひろよめるよ」
「じゃぁ、せーので読むぞ」
「うんっ」
2人はワクワクと顔を見合わせた。
「せーのっ」
“ 電灼光華 急々如律令 ”
突然、2人の目の前が真っ白に光った。
かと思えば、耳を劈く轟音。
小さな2人の身体が一瞬浮かぶほどの衝撃。
小さな子ども2人は、大きな目を零れんばかりに見開いて、
ぽかんと口を開けてしまった。
空は相変わらずの晴天。
その中に落ちた、雷。
2人が唱えた呪文は、雨を降らすものではなく、雷を召喚するもの。
しかも、2人は未だ己らが如何程の力を有しているのか、さっぱり自覚がなかった。
珂神の次代と、安倍の後継。
2人の加減ない力で召喚された雷は、それはもう凄まじい威力であった。
その証に、轟音と共に落ちた雷は、庭に大きな穴を穿った。
あまりの事態に硬直する2人の上に、黒い影が落ちる。
恐る恐る振り返れば、鬼の形相の真鉄が、仁王立ちになっていた。
「・・・比古・・・昌浩」
いつもより数段低い声音と、立ち上る怒気に、2人は飛び上がった。
真鉄はとっても優しい。
とってもとっても優しいけれど、とってもとっても怖い。
悪戯をしては容赦なく叱られてきた2人は、反射的に正座をした。
後継者も他所の子も関係ない。
悪いことをしたら怒る。それが真鉄の教育方針だ。
かくして、小さな子ども2人の頭上にも、特大の雷が落ちることとなる。
余談。
「それにしても、凄い雷でしたね」
当代安倍当主の息子・吉昌は、同僚の言葉に曖昧に笑って見せた。
吉昌が勤める天文学研究所は、昼間突如発生した落雷の話題で持ちきりだった。
異常気象か、怪奇現象か。
大騒ぎの同僚たちに、まさか言えるわけもない。
あの、実はあの雷、うちの末っ子たちの仕業なんです、なんて。
遣る瀬無いため息を吐き、吉昌はよく晴れた空を見上げるのだった。
終わり