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2024年11月24日
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君に敵う者はなく

2010年09月06日

++君に敵う者はなく++

過去作品です。
チビ昌は最強だよねって話です。
晴明はさぁ、昌浩の涙に弱いはずv

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晴明が怪我をしたのは、昨日のことだった。

都を徘徊していた異形を倒す際、少々手こずってしまったのが原因。
ほんの一瞬気を緩めてしまったせいで足を捻ってしまったのだ。

それほど手ごわい相手でもなかったため、晴明は実体で異形に対峙した。
敵を侮り怪我をするなどと、自分もまだまだ甘いなと、茵の中で晴明はむむぅっと唸った。

「・・・・しかし、ただ捻っただけじゃというのに・・・」

ぶつぶつと、晴明は文句を言う。
足を捻っただけなのだから、こうやって茵に入っておく必要はないと思うのだが、
如何せん、もし起き出そうものなら周囲の視線がものすごく冷たくなる。
現に、今身を起こしているだけでも視線がもの凄く痛い。

「・・・・お前たち、そうずっと見張っておらんでも・・・」
「見張っていないとすぐ抜け出すだろうが」

すっぱりと斬り捨てたのは、すぐ近くに座していた白虎だ。
その隣にすっと顕現した天后も、非難がましい目でじとっと睨んでくる。

「晴明様、お願いですから横になっていてください」
「待て待て、わしは別に病でも何でもないぞ?少しぐらい動いても・・・」
「いいえ!」

天后がずずいっと晴明の傍らに寄った。

「晴明様がお怪我をされたのは、近頃の疲れが溜まっていたせいです!」

天后の言う通り、ここ最近の晴明は非常に多忙であった。
寝ずに夜を明かすことも少なくなく、その内倒れはしまいかと神将たちは皆案じていたのだ。
そうした矢先の怪我である。
晴明が油断をしたのではない、疲れが集中力を鈍らせただけのことなのだ。

「晴明、よい機会だ。じっくり休め」

子どもの姿をした玄武が、しかめっ面で言い刺した。
他にも姿こそ見せないが、控えている神将たちが同意する気配が感じられた。
これだけ周囲から言われれば、晴明も大人しくしているより他仕方がない。

しかし寝ろと言われても、どうにも昼間から寝るのは落ち着かないし、したい仕事も多く残っている。
座って占をするぐらいはいいのではと思うのだが、神将たちはそれを是としない。
さてどうしたものかと晴明が思案していると、ぱたぱたと軽い足音が近づいてきた。



「じーさまっ」

飛び込んできた安倍家の末っ子は、鎮座する神将たちを素通りして、祖父の傍へと駆け寄ってきた。

「昌浩、どうしたのじゃ」

晴明は、息を切らせた末孫に首を傾げる。
彼の孫は、その大きな瞳に涙まで溜めていた。

「じいさま、しなないでっ」
「・・・・・・・・は?」

晴明はパカッと口を開いた。
その間にも、幼い昌浩はうるうると瞳を潤ませて晴明に縋り付いている。

「おおけがしたってほんとう?じっとしてないとしんじゃうんでしょ?」

誰だそんな偽りを言ったのはと、晴明は心の中で叫んだ。
それを昌浩に尋ねれば、ちちうえだと無邪気に答えが返った。
晴明は苦笑交じりに幼い孫の頭を撫でる。

「昌浩や、じいさまは元気じゃぞ?ほれ、もう動いても全然・・・」

よいしょと身を起こそうとした晴明は、そこでぴたりと動きを止めた。
彼を諌めようとした神将たちは、それを不思議に思い首を傾げる。
見れば彼らの主は、末の孫の顔を見たきり固まっているではないか。

見鬼を封じられている末孫の顔を、玄武はひょいと覗きこんだ。
主が可愛がっている末孫は、それはもう悲しそうな顔で、祖父をじぃぃっと見上げているではないか。

「・・・・・・」

恐ろしい程の沈黙の後、晴明は無言で元のように茵に横になった。
すると昌浩の顔がほぉっと緩む。
しかしまた晴明が身を起こそうとすると、幼い面がこの世の終りのような顔をするのだから堪らない。
身動きができなくなってしまった晴明は、何とか孫の誤解を解こうと焦った。

「ま、昌浩。あのな、じいさまは別に寝ておらずとも・・・」
「じいさま、じっとしてなきゃしんじゃうって、ちちうえがいったもん・・・」

昌浩は、小さな手できゅっと祖父の手を握った。

「だからね、まさひろ・・ずっとここでかんびょうするね?だからじいさま、はやくなおってね」

キラキラとした瞳が、晴明をじぃっと見つめる。

「・・・・・・・・・」

動けるわけがなかった。





暫く片時も離れない孫に冷や汗を掻いていた晴明だが、やはり疲労が溜まっていたらしい。
今ではすぅすぅと安らかな寝息を立てていた。

それをじーっと見守っていた幼子の頭が、ふらふらと揺れ始める。
どうやら眠る祖父を見ているうちに、眠気が襲ってきたらしいのだ。

ふらふらと何度か小さな頭が揺れ、やがてぱたっと晴明の茵に突っ伏してしまう。
それを苦笑して眺めていた勾陣が、幼い身体を晴明の横へ寝かせた。

そっと頭をひと撫でして、笑う。

「お手柄だったな、昌浩」

他の誰であれ、こうまで上手く晴明を寝かせることなど出来はしない。
晴明は、この末の孫に殊の外弱いのだから。

くすりと笑った勾陣に、玄武がすすっと近づく。
すやすや眠る2人を見つめ、呟いた。

「それにしても、やはり吉昌も晴明の子だな・・・・」

晴明が大人しく休むわけはないと判断した吉昌は、最強の札を用意してきた。
昌浩に泣かれれば、晴明とて休まないわけにはいかないだろうと。

「それにしても」

玄武が顔を顰める。

「たまには我らの言も、素直に聞き届けてほしいものだ」

勾陣を始め、その場にいた神将たちは、その言葉に深く同意を示したという。

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