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現パロ(比古+昌)②
新しい作品です。
とりあえず紅蓮ださな!と書いたものですね。
チビ昌+紅蓮はもちろんのことですが、
チビ比古+真鉄も予想以上に楽しいかもしれない!!
次は注射ネタでもやりたいとこです。
+ + + + + + + + + + +
夕暮れの道を、2つの小さな影が進んでいた。
「昌浩、もう少しだからがんばって」
「うん・・・」
比古が手を引く1つ年下の少年は、先ほどから何度も目を擦っている。
昼過ぎから公園ではしゃぎ続けていたのだ。
昼寝もしていないから、眠くなるのは当然だった。
かく言う比古も、本当のところ少し眠い。
しかし昌浩の手前、そんな素振りを見せようとはしなかった。
「ほら、あのかどを過ぎたらあとちょっと・・・」
ついに、昌浩の頭がカクンと揺れた。
慌てて頭を起こすも、すぐにふらふら揺れてしまう。
足取りも、どんどんゆっくりになってしまった。
これでは眠ってしまうのも時間の問題だ。
仕方がないと、比古は昌浩の前にしゃがみこんだ。
「昌浩の家まで、おんぶしてあげる」
「おんぶ?」
舌ったらずに問い返し、昌浩が首を傾げた。
「でも、まさひろおもいよ?」
「おれのほうが1歳上だもん。へいき」
強く促すと、恐る恐る昌浩が背中に乗ってきた。
昌浩は同い年の子どもより小柄だから軽い・・・とは言え、比古だってまだ5歳だ。
少し歩くうちに、すぐに足が辛くなってしまう。
「ひこ、まさひろおりる?」
眠い目を必死に開けて、心配そうな声が背中から聞こえる。
肌寒い季節に額からは汗が滲んだが、比古は平気だよと声を上げた。
ここまで来ると、半ば意地もあったのかもしれない。
「だいじょぶ?」
「大丈夫」
何度かそのやり取りを繰り返す中、急に背中の重みが増す。
昌浩が、眠ってしまったのだ。
「あと、ちょっと・・・」
比古は流れた汗を拭った。
あの角を曲がれば、昌浩の家が見える。
見えるのに、あとちょっとの距離がひどく遠くて。
ふらふらよたよたと危なっかしい足取りに、とうとうその男は見ていられなくなってしまった。
ふっと背中から重みが消えて、比古は慌てて後ろを振り返った。
夕日を背負い、ひどく長身の男が比古を見下ろしている。
子どもの比古からすれば、首をぐぐいっと上向かなければ見えないほど、だ。
「あ・・・」
この男を、比古はよく知っていた。
昌浩の、おじいさんのボディーガード・・・みたいなものだと、真鉄が言っていた。
でも比古にはわかる。
彼、他にも何人かいるが、彼らは人ではない。
事実、現れた男は人と同じ姿をしていたが、今の今まで影も形もなかったのだ。
今はただ、人に見えるように姿を現しているだけ。
比古はこの男が好きではなかった。
というか、本能的に怖いとすら思っていた。
背が高いとか、目つきが、とかではなく、彼の周りの空気が痛いと思っていた。
でも、昌浩がやってきて、彼の空気は少し変わった。
比古の前には滅多に姿を現さないが、時折昌浩のお守りをしている姿を遠くから見ることがある。
ぎこちないながら、笑みに似たものすら浮かべる男に、比古は驚いたものだ。
だから、前ほどこの男が怖いわけではない。
が、恐怖が薄れるのとは別に、彼に好意を持てない理由がある。
「・・・いくらなんでも、背負っていくのは無理だろう」
低い声に、ムッとする。
軽々と昌浩を腕に抱く男は、背も高ければ体付きも逞しい。
子どもの比古は、全然相手にもならないだろう。
それでも、比古はこの男に負けたくないと思った。
「1人で帰れるか」
「かえれるよ!」
そうかと、男は短く応え、さっさと歩き出してしまった。
ふいに、冷たい風が吹き抜ける。
男が昌浩を片手に抱き、反対の手でその身を覆った。
幼い子どもの眠りを妨げないように。
何よりも子どもを慈しむ、絶対的守護者の腕だ。
昌浩はきっと、何の不安も抱かず眠っているだろう。
遠ざかる男の背を見送り、湧き上がってきた思いは、悔しさではなかった。
とぼとぼと、神社への道を辿る。
繋ぐ手もなければ、背負う温もりもない身はひどく寒い。
逞しい腕に感じたのは悔しさではない。
それよりもっと、切ない思いが胸を満たす。
「比古」
よく通る声に、ハッと顔を上げた。
神社の階段の下に、人影が見える。
よく見えなくても、声だけですぐにそれが誰だかわかった。
自分の名を、こんなに優しい声で呼ぶ人は、他にない。
「真鉄っ」
全力で駆け、出迎えた真鉄の腕に飛び込む。
懸命な力でしがみ付くと、苦笑じみた声が降って来た。
「昌浩がいないと、急に甘えん坊に逆戻りだな」
「わ、」
ひょいと、腕に抱き上げられて、比古は目を丸くした。
そのまま階段を上り始める真鉄に、問いかける。
「今日は歩けっていわないの?」
いつも、しんどいとか、抱っこしてとかお願いしても、真鉄は許してくれない。
優しいけれどすごく厳しい人なのだ。
「今日は特別だ」
「なんで?」
真鉄は比古を抱え直し、穏やかに目を細めた。
「頑張って、歩いていたから」
比古は、ぱちくりと目を瞬かせる。
「・・・真鉄、みてた?」
真鉄は、微かに微笑んだだけで、答えてくれなかった。
それでも、褒められたことが嬉しくて、きゅっと真鉄にしがみ付く。
ちゃんと抱き返してくれる腕に、嬉しくなった。
自分にも、慈しみ守ってくれる腕があって。
この腕の中でなら、比古は何の不安も切なさも、感じることがないのである。