忍者ブログ

[PR]

2024年11月24日
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

現パロ(比古+昌)②

2010年10月28日
++現パロ++

新しい作品です。
とりあえず紅蓮ださな!と書いたものですね。
チビ昌+紅蓮はもちろんのことですが、
チビ比古+真鉄も予想以上に楽しいかもしれない!!
次は注射ネタでもやりたいとこです。

+  +  +  +  +  +  +  +  +  +  +


夕暮れの道を、2つの小さな影が進んでいた。

「昌浩、もう少しだからがんばって」
「うん・・・」

比古が手を引く1つ年下の少年は、先ほどから何度も目を擦っている。
昼過ぎから公園ではしゃぎ続けていたのだ。
昼寝もしていないから、眠くなるのは当然だった。
かく言う比古も、本当のところ少し眠い。
しかし昌浩の手前、そんな素振りを見せようとはしなかった。

「ほら、あのかどを過ぎたらあとちょっと・・・」

ついに、昌浩の頭がカクンと揺れた。
慌てて頭を起こすも、すぐにふらふら揺れてしまう。
足取りも、どんどんゆっくりになってしまった。
これでは眠ってしまうのも時間の問題だ。
仕方がないと、比古は昌浩の前にしゃがみこんだ。

「昌浩の家まで、おんぶしてあげる」
「おんぶ?」

舌ったらずに問い返し、昌浩が首を傾げた。

「でも、まさひろおもいよ?」
「おれのほうが1歳上だもん。へいき」

強く促すと、恐る恐る昌浩が背中に乗ってきた。
昌浩は同い年の子どもより小柄だから軽い・・・とは言え、比古だってまだ5歳だ。
少し歩くうちに、すぐに足が辛くなってしまう。

「ひこ、まさひろおりる?」

眠い目を必死に開けて、心配そうな声が背中から聞こえる。
肌寒い季節に額からは汗が滲んだが、比古は平気だよと声を上げた。
ここまで来ると、半ば意地もあったのかもしれない。

「だいじょぶ?」
「大丈夫」

何度かそのやり取りを繰り返す中、急に背中の重みが増す。
昌浩が、眠ってしまったのだ。

「あと、ちょっと・・・」

比古は流れた汗を拭った。
あの角を曲がれば、昌浩の家が見える。
見えるのに、あとちょっとの距離がひどく遠くて。
ふらふらよたよたと危なっかしい足取りに、とうとうその男は見ていられなくなってしまった。



ふっと背中から重みが消えて、比古は慌てて後ろを振り返った。
夕日を背負い、ひどく長身の男が比古を見下ろしている。
子どもの比古からすれば、首をぐぐいっと上向かなければ見えないほど、だ。

「あ・・・」

この男を、比古はよく知っていた。

昌浩の、おじいさんのボディーガード・・・みたいなものだと、真鉄が言っていた。
でも比古にはわかる。
彼、他にも何人かいるが、彼らは人ではない。
事実、現れた男は人と同じ姿をしていたが、今の今まで影も形もなかったのだ。
今はただ、人に見えるように姿を現しているだけ。

比古はこの男が好きではなかった。
というか、本能的に怖いとすら思っていた。
背が高いとか、目つきが、とかではなく、彼の周りの空気が痛いと思っていた。

でも、昌浩がやってきて、彼の空気は少し変わった。
比古の前には滅多に姿を現さないが、時折昌浩のお守りをしている姿を遠くから見ることがある。
ぎこちないながら、笑みに似たものすら浮かべる男に、比古は驚いたものだ。

だから、前ほどこの男が怖いわけではない。
が、恐怖が薄れるのとは別に、彼に好意を持てない理由がある。

「・・・いくらなんでも、背負っていくのは無理だろう」

低い声に、ムッとする。
軽々と昌浩を腕に抱く男は、背も高ければ体付きも逞しい。
子どもの比古は、全然相手にもならないだろう。
それでも、比古はこの男に負けたくないと思った。

「1人で帰れるか」
「かえれるよ!」

そうかと、男は短く応え、さっさと歩き出してしまった。

ふいに、冷たい風が吹き抜ける。
男が昌浩を片手に抱き、反対の手でその身を覆った。
幼い子どもの眠りを妨げないように。
何よりも子どもを慈しむ、絶対的守護者の腕だ。
昌浩はきっと、何の不安も抱かず眠っているだろう。

遠ざかる男の背を見送り、湧き上がってきた思いは、悔しさではなかった。







とぼとぼと、神社への道を辿る。
繋ぐ手もなければ、背負う温もりもない身はひどく寒い。

逞しい腕に感じたのは悔しさではない。
それよりもっと、切ない思いが胸を満たす。

「比古」

よく通る声に、ハッと顔を上げた。
神社の階段の下に、人影が見える。
よく見えなくても、声だけですぐにそれが誰だかわかった。
自分の名を、こんなに優しい声で呼ぶ人は、他にない。

「真鉄っ」

全力で駆け、出迎えた真鉄の腕に飛び込む。
懸命な力でしがみ付くと、苦笑じみた声が降って来た。

「昌浩がいないと、急に甘えん坊に逆戻りだな」
「わ、」

ひょいと、腕に抱き上げられて、比古は目を丸くした。
そのまま階段を上り始める真鉄に、問いかける。

「今日は歩けっていわないの?」

いつも、しんどいとか、抱っこしてとかお願いしても、真鉄は許してくれない。
優しいけれどすごく厳しい人なのだ。

「今日は特別だ」
「なんで?」

真鉄は比古を抱え直し、穏やかに目を細めた。

「頑張って、歩いていたから」

比古は、ぱちくりと目を瞬かせる。

「・・・真鉄、みてた?」

真鉄は、微かに微笑んだだけで、答えてくれなかった。
それでも、褒められたことが嬉しくて、きゅっと真鉄にしがみ付く。
ちゃんと抱き返してくれる腕に、嬉しくなった。


自分にも、慈しみ守ってくれる腕があって。
この腕の中でなら、比古は何の不安も切なさも、感じることがないのである。


 

PR
Comment
  Vodafone絵文字 i-mode絵文字 Ezweb絵文字
Trackback
トラックバックURL: