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2024年11月24日
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現パロ(比古+昌)④

2010年11月06日

++現パロ++

新しい作品です。
最近現パロばっかでマズイかなーと思いながら
ちまいのが好きすぎて困る・・・

+  +  +  +  +  +  +  +  +  +  +


「でも・・・」

向き合う人の目が険しくなり、比古は小さな身体をぎゅっと縮込めた。
比古の親代わりであり、兄代わりである真鉄は、優しいけれどとても厳しい。
特に、“でも” や “だって”という言い訳の言葉を使うと、怒られるのが常だった。

「ごめんなさい」

言っては駄目だと言われていることを言ったので、それについては素直に謝る。
大抵の場合、真鉄はそれで許してくれた。
眉間の皺を緩めた真鉄は、膝を抱えた比古の前に座り、息を吐く。

「去年は何も言わなかっただろう」
「・・・前のがすごく痛かったんだもん・・・」

比古は、ぎゅーっと膝を抱きしめる。

「注射は、やだ・・・」
「予防接種を受けないと、病気になるぞ」
「おれ、元気だもん」
「病気にならないために受けるんだ」

比古は、ぐぐぐっとせり上がって来た涙を必死で堪える。
でも、去年の痛みを思い出すと、嫌で嫌で仕方がないのだ。

「おれ行かない!もゆら、たすけて!」

しがみ付かれた灰白の狼が、おろおろと首を振る。

「比古ぉ・・・どうしようたゆら、比古が可哀想だよ」

呆気なく絆された狼を、灰黒の狼の尾が叩く。
比古に甘々のもゆらとは違い、たゆらは真鉄にそっくりで、たまにとても厳しい。

「それで病気になったら、もっと可哀想だろう」
「あ、そっかぁ・・・」

大きな狼は、小さな子どもを優しく包み込んだ。

「比古、2人の言う通りだよぉ・・・痛いのなんて、一瞬だよきっと!」

唯一の味方を失って、比古の抵抗もそこまでだった。

行くぞと真鉄に促され、しおしおと項垂れて立ち上がる。
当然足取りも重く、真鉄が一歩進んでは待ち、一歩行っては待ちというペースだ。
そんなわけで、階段に辿り着くまでには結構な時間が経ってしまった。

「あれ?」

俯く比古の隣で、見送りに来た狼が耳を動かす。
人ではない彼らは、人よりもずっと優れた聴覚を持っていた。

「どうしたの、もゆら」
「んー・・・子どもの泣き声かなぁ」
「なきごえ?」

パッと、比古は顔を上げた。
この辺りで子どもといえば、比古が知る限り1人だけだ。
さきほどまでの重い足取りはどこへやら、真鉄を引きずる勢いで階段を駆け下りた比古は、
まっすぐに近所の安倍邸へと足を向けた。
もゆらの言った通り、門前でしくしくと泣く子どもが見える。
何とか宥めようとしているのは母親だ。
その母親が、比古たちに気付いた。

「あら、比古くん」
「こんにちはっ」

比古は、てててっと駆け寄って、泣く子どもの手を取った。
涙を溢れさせた大きな瞳が、比古のほうへ向けられる。

「昌浩、どうしたんだよ」
「・・・ひこぉ・・・」

ぎゅーっとしがみ付いてきた1つ年下の少年を、比古はよしよしと撫でてやった。

「ころんだの?それとも、どこか痛い?」

昌浩が首を振る。

「あのねぇ、やなの・・・」
「やって、何が?」
「ちくってするの・・・」

ぱちくりと、比古は目を瞬かせた。
それは、もしや。

「困ったわね。予防接種がどうしても嫌だって、愚図ってしまって」
「あぁ、こちらも丁度受けに行くところです」

真鉄の言葉に、昌浩が顔を上げた。

「ひこも?」

縋るような目に、比古は力強く頷いた。

「そうだよ、おれも注射、いくんだ」
「えー・・・いたくない・・・?」
「ちょっとチクってするけど、へいき」

昌浩の目が、キラキラと輝く。

「ひこ、すごーい」
「昌浩も、男の子なんだから、がまんしろよ」

比古は胸を張った。

「おれがいっしょに行ってやるし、それなら怖くないだろ?」
「うん」

きゅっと涙を拭った昌浩が、比古の手を握り締める。
それを見ていた母親が、感心したように息を吐いた。

「さすが比古くん。来てくれて助かったわ」

お礼を言われた真鉄は、仲良く歩く子ども2人を見下ろして、口元を緩めた。

「むしろ、助かったのはこちらです」

全く、先ほどの愚図りようはどこへやら、だ。
不思議そうな昌浩の母に、真鉄は小さく首を振って見せた。

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