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2024年11月24日
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教育の賜物
2010年09月19日
++教育の賜物++
過去作品です。
朱雀と天一とちび昌。
ちなみに我がサイトでは、朱雀は「すー」、天一は「天ちゃん」です。
あしからず。笑
+ + + + + + + + + + +
過去作品です。
朱雀と天一とちび昌。
ちなみに我がサイトでは、朱雀は「すー」、天一は「天ちゃん」です。
あしからず。笑
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「天貴・・・」
「朱雀・・・」
見つめ合って手を握り合う。
互いに互いの姿しか恐らく見えてはいないのだろう。
じー。
もちろんすぐ傍で、大きな瞳を瞬かせている幼子さえも
彼らには見えていないに、違いない。
「・・・・・・・・朱雀、天一」
大人びた声が響き、小柄な影が顕現した。
水将玄武は、本日の守り役の同胞二人を一瞥すると、すぐ傍に座っている幼子の隣に腰を降ろした。
主の末孫はその場にちょこんと座り、大きな瞳で神将二人を見上げている。
「幼子の教育上、あまりよくないとわれは思うのだが・・・」
天一を腕に抱いたまま、朱雀は得意げに笑った。
「何を言う、昌浩も将来意中の相手を口説かなければいけないんだぞ?その見本を見せる者が他にいるか?」
昌浩の周りには、たくさん面倒を見る大人はいる。
しかし色恋について教えてくれそうな大人は・・・あまりいない。
強いて言えば両親だろうが、吉昌は昌浩にはまだ早いと、むしろそういった話題は避けるだろう。
確かに朱雀の言うことも最もなのだが。
「天貴・・お前はこの世の何よりも美しい・・・天女など足元にも及ばない・・」
「朱雀ったら・・昌浩様が見ているわ・・」
「誰が見ていようと構うものか。俺には天貴しか見えない」
「朱雀・・・」
二人がどんどんと密着していく。
流石にまずくないか。
玄武は昌浩をそっと抱えて、室の隅に移動した。
あれ以上見せるのはやはりどうかと思ったからだ。
大人しく運ばれる昌浩を床に降ろし、玄武はひょいとその顔を覗き込んだ。
幼子の瞳がキラキラと輝いているのは気のせいか。
「ねぇ、げんぶ」
「何だ昌浩」
幼子はちょこんと首を傾げた。
「てんちゃん、うれしい?」
「・・まぁ幸せそうではあるが・・なぜだ?」
というよりあの二人はいつもああなのだが。
同胞の玄武は慣れたものだ。
「あのねー、れんもうれしい?」
「・・・・は?」
昌浩は、んーっと顎に手を当てた。
「れんにいうの。えっと、うつくしー?てん・・てんにょ!そいから・・えっとぉ・・れんしかみえない?」
青褪める玄武に対して、昌浩は無邪気なものだ。
「れん、うれしいかな!」
期待に満ちた瞳に、玄武は何も答えられなかった。
とりあえず主に、あの二人で一緒に子守をさせるのは止めた方がいいと、進言すべきだろうか。
「・・・という話を玄武から聞いた」
涼やかな目元を面白そうに細めて、勾陣が話を区切った。
勾陣の話を黙って聞いていた物の怪は、胡乱気に顔を顰める。
「そういえば、一時昌浩は妙な言葉ばかり使っていたが・・そうか、あいつらの影響だったのか」
ある一時、昌浩は好きだの愛してるだの、爆弾発言しては祖父や紅蓮を沈没させていた。
紅蓮が一番驚いたのは、『れんがいればなんにもいらないもん』だった。
あれは本当に驚いた。
「あの時のお前は見物だったな」
勾陣が楽しそうにクスクスと笑う。
その言葉が幼子から発せられた時、丁度勾陣もそこにいた。
びしっと音を立てて固まった同胞の姿に、勾陣も驚いたものだ。
「凶将騰蛇を硬直させられる子どもなど、昌浩だけだろうな」
「楽しそうだな、勾」
「事実楽しいからな」
ぎろりと睨む夕焼けの瞳にも動じず、勾陣は楽しそうだ。
「何の話?」
室に入って来たのは、噂の末孫である。
まぁここは彼の部屋なので、入ってくるのは当然だが。
「露樹の話は終わったのか?」
「うん。今から彰子と市へ行くんだ」
昌浩がそう言うと同時に、室に新たな人物が現れる。
「昌浩、行きましょう」
出かける仕度を整えた彰子である。
「もっくん、行くよ」
「おうよ」
物の怪はひらりと昌浩の肩に飛び乗った。
勾陣も付いて来るらしく、軽い所作で立ち上がる。
「あれ彰子、その花どうしたの?」
彰子の手にある一輪の花を見つけ、昌浩が尋ねる。
「さっき庭で見つけたの。綺麗でしょう?」
後で露樹様に飾ってもらおうと思って。
そう言って彰子は笑った。
「うん綺麗。あ、でも・・・」
彰子の手から、昌浩は花を抜き取った。
「この色だったら、彰子に似合いそうだなーって」
「え?」
昌浩が、彰子の髪にそっと花を挿す。
綺麗な髪に花が揺れるのを見て、満足そうに昌浩は笑った。
「うん、やっぱり似合うなぁ」
「そ・・そう?」
彰子が頬に手を当てた。
心なしかそこは赤く染まっている。
無理もなかろう。
「彰子、どうしたの?行こう」
もちろん首を傾げている昌浩は、分かっていないだろうが。
少年の肩から飛び降りた物の怪の傍に、勾陣が立つ。
「・・・あれは無自覚なのか?」
「天然・・だろうなぁ・・・」
そういう意味で、朱雀の教育は実を結んでいるのだろう。
主の室に留まる2つの神気。
闘将二人はその方向を見やって、同時に肩を竦めたのだった。
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