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2024年11月24日
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雨あがり
2011年04月03日
++雨あがり++
新しい作品です。
太陰がぎゃいぎゃいしてるのも可愛いと思ったりします^^
+ + + + + + + + + + +
何で、外へ出るのだ。
太陰は悲鳴を上げることもできず硬直していた。
何で、雨が上がったばかりなのに、大人しく室で遊んでいないのだ。
よりによって、どうして庭へ出ようなどと思うのだ。
ぬかるんで、水たまりだらけで、明らかに足場の悪い庭へ。
それも、まだ足元が覚束ないというのに、だ。
止める暇なんてなかったのよ!!
太陰は内心必死に言い訳をする。
何で子どもの傍に誰もいなかったのだろう。
たまたま、たまたまたまたま誰の目もなかった時に、昼寝をしていた
幼子は目を覚ましたらしい。
たまたま、たまたまたまたま顕現した太陰は、それに気付いた。
主の末孫・昌浩は、歩けるようになってからというもの
なかなかじっとしていなくて、子守は手を焼くのだ。
大人びた顔で言った玄武の横で、男の子はそれぐらい元気でないと、と
白虎が穏やかに微笑んでいた。
起き出した幼子を見て、太陰はその時の会話を思い出した。
でもまさか、何の迷いもなく庭へ飛び出すなんて、想像できなかったのだ。
昌浩が起きたと、主にでも伝えよう。
そう思って、一瞬目を離した隙に、子どもの身体は庭にあった。
「たーいん」
事態に付いていけない太陰を呼ぶ幼子が指差す先。
ぴょんぴょん跳ねる蛙。
幼子の興味を一心に集めたそれは、あっという間に茂みに消える。
子どもはそれを追いかけた。
そして、転んだのだ。
それはもう見事に。
べしゃっと。
太陰が風を出す余裕すらなかった。
泥を飛ばして転んだ小さな身体に駆け寄って、真っ青になるばかりだ。
泥に突っ伏した子どもは動かない。
どうしよう、どうしよう。
太陰は混乱した。
頭を打ったのだろうか?
どこか怪我でもしたのだろうか?
太陰は考えた。
もし、昌浩が怪我をした場合、どうなるだろう。
お前が付いていながらと、白虎に叱られる。
溺愛する孫が怪我をしたら、晴明が悲しむ。
何より、あの同胞が・・・
鬼のような凶将を脳裏に浮かべ、太陰は震え上がった。
「ちょ、ちょっと昌浩!!ねぇ!しっかりして!!」
自分こそが死にそうな顔で、太陰は子どもを抱き起こした。
昌浩は泣いてはいなかった。
しかし、泥だらけの顔で、うええっと舌を出した。
口の中にも泥が入ってしまったのだろう。
だが、見た限りでは怪我はなさそうだ。
ほーっと胸を撫で下ろし、太陰は眉を吊り上げた。
「もう!危ないんだから一人で出て行ったら駄目じゃない!!」
ぷりぷり怒る太陰の前で、昌浩はまだ苦そうな顔をしている。
顔だけでなく、全身泥だらけだ。
これでは怪我はなくとも、白虎あたりに小言を食らってしまうかもしれない。
「仕様がないわね!」
ふわりと浮き上がった太陰は、両手を前に出した。
「今泥を吹き飛ばしてあげるわ」
太陰はホッとしたせいで、すっかり忘れていた。
自分が、風の強さを調整することが、頗る不得手だということを。
幼子の身体が一瞬宙を浮く。
強すぎる風に、踏ん張りのきく大人ならまだしも、小さな身体は簡単に吹き飛んだ。
危うく地面に激突しそうになった昌浩を受け止めたのは、逞しい腕だ。
「・・・太陰」
低い、低い声音に、今度こそ太陰は色を失った。
雨上がり 水たまり 泥
そこに幼子が加わると、事態は最悪だ。
太陰はそれを、身を以って知ったのだった。
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